「へぇ~、ここが浩之の家なんだ」
目の前には普通の一軒家、二階建ての庭付き一戸建て。
「一人暮らしにはちょっと広いけどな」
始めて入る異性の家。
ちょっとどきどきしている。
こんなに緊張するのは何時以来だろう。
「それではお嬢様、こちらへどうぞ」
浩之が恭しく扉を開けてくれる。
「ありがとう・・・・・・って似合わないわよ」
ううん、嘘。本当は似合ってる。
だってこんなにもどきどきしているんだもの。
「ほっとけ」
浩之は笑っていた。
To Heart
第5話 訪れた後
リビングでお茶を飲みくつろいでいる。
対面には浩之、キッチンにあかり。
お昼が出来るのを待っている訳だ。
勿論、私も手伝おうとはしたんだけど
「綾香さんは今日はお客さんだから・・・」
と断られてしまった。
正直助かった。
料理はあんまり得意じゃない。
でも、レシピを見れば一通りは作れるわよ・・・・・・たぶん。
そんな訳で今の状態なんだけど・・・
しかし、知り合って間もない異性の家でいきなりご飯を食べる。
料理は他の女性の手作り。しかも誘ったのはその女性。
・・・普通はついて行かないわよね。
でも、浩之の家に行ってみたかったし・・・。
家の中をぼんやり見渡す。
「綾香、どうした?そんなに飯が待ち遠しいのか?」
「違うわよ。」
浩之のデリカシーの無い科白に反射的に反論する。
う~ん、こういうところが付き合いやすいのよね。
「「「ごちそうさま」」」
少し遅い昼食を食べ終わった。
料理はあかりの手作り。
分かってはいたけど改めて思う、あかりは料理が上手だ。
私では足下にすら及ばない。
相手の実力を素直に認める。
これはすべてに置いて重要だ。
「あかりって本当に料理上手ね」
「えへへ、ありがとう」
あかりははにかむ。
その仕草は私から見てもとてもかわいらしい。
幼馴染で料理が上手、しかもかわいらしい・・・
「この後どうする?」
そんな普通の男ならいちころなあかりの仕草に浩之は関心を示さない。
鈍いのかそれとも慣れているのか・・・・・・
「私は用事があるから帰るね」
そう言いながらあかりは後片付けを始める。
私も手伝わなくちゃ。
「片付けぐらいは手伝うわよ」
「そう?それじゃ、洗い終わったのを拭いてくれるかな」
あかりはフキンを差し出した。
片付けが終わるとあかりはさっさと帰っていった。
あかりが浩之を好きなのは一目瞭然。
気がついていないのは浩之ぐらいだろう。
あかりは私と浩之が二人っきりになるのが気にならないのかな?
「綾香はどうする?」
「え?う~ん、浩之は暇なの?」
「ああ」
「それじゃ、遊ばない?」
「いいぞ、何する?」
「そうねぇ~、あ!浩之の部屋が見てみたいな」
「はぁ?いいけど、面白くも何ともないぞ」
「いいからいいから」
「分かったよ」
浩之はそう言うと立ち上がる。
「こっちだ」
私は浩之の後ろについて行く。
階段を上がり廊下を少し歩くと浩之は立ち止まる。
「ここだ」
扉を開け中に入っていく。
あ、また胸がどきどきしてきた。
深呼吸を一つして動悸を押さえ部屋に入る。
「おじゃまします」
部屋の中には勉強机にベットが一つ、あとタンスと本棚が一つずつある。
窓は南向きで日当たりは良い。
「へぇ~、綺麗ね。」
予想とは違い掃除されて綺麗だった。
「掃除してないと思ってただろう」
「え!?えっと・・・・・・うん、思ってた」
図星を指されちょっと焦ってしまう。
だって男の一人暮らしは部屋が汚いってイメージがあるし、浩之が掃除している姿は思いつかないし。
「まあ、そんなに頻繁にはしないんだけど、あかりがうるさいからしな」
「ふ~ん」
なんとなく気にくわない。
「綾香、何してるんだ」
「見て分からない?」
「何でベットの下を漁ってるんだ?」
「だって、男の人のベットの下を漁るのは女の浪漫よ」
「はぁ~?」
「嘘嘘。本当は学校でね、『男のベットの下にはエッチなものが隠されているのよ』って言ってた娘が居たからその確認」
「あのな・・・」
浩之はこめかみを押さえている。
「あ!!なんか発見!!」
探っていた手に何かが当たった。
「浩之も男の子ね~」
私は躊躇せず引き出す。
しかし、手の中にあったのは予想していたものとは違った。
「あ、それ、そんなとこにあったんだ」
それはアルバムだった。
浩之は私の手からさっと奪うと中身を確認しはじめる。
私も横から覗き見る。
そこには小さい子供達が写っている写真が並んでいた。
「これ、浩之?」
ちょっと目つきの悪い子供を指差し聞いてみる。
「ああ、これは俺。で、これがあかり」
「何時頃の写真?」
「そうだな・・・・・・幼稚園の年長から小1ぐらいの奴だな」
「ゆっくり見せてよ」
「ああ、いいよ」
二人してベットに腰掛ける。
「へぇ~、この頃は浩之も可愛いんだ」
「それはどういう意味かな」
浩之が心外だという顔をする。
「何?高校生にもなって可愛いって言われたいの?」
「いえ、結構です」
「・・・・・・・」
「何?姉さん?」
夕食後、いつもの様に姉さんとお茶を飲んでいる。
「・・・何かあったんですか?」
「えっ!?どうして?」
「・・・凄く機嫌がいいですから」
「そうかな?」
「・・・はい」
う~ん、やっぱり姉さんは鋭いな。
正直に話さないとズルイよね。
「えっとね。今日、浩之の家に行ったんだ。」
姉さんが驚いた顔をする。
「お昼に偶然会ってね。お昼を浩之の家で一緒にね。作ったのはあかりなんだけど、彼女やっぱり料理が上手なんだ」
「・・・・・・」
「で、その後浩之の部屋で小さい頃のアルバムを見せてもらったんだ」
「・・・そうですか」
ちょっと悲しそうな顔をする姉さん。
その表情が私の心に罪悪感をもたらす。
ごめんね、抜け駆けだよね・・・
「次は姉さんも一緒に行こうね」
「・・・・・・」こくこく
「藤田浩之・・・か」
ベットに転がりそっと呟く。
姉さんの思い人。
そして、私の・・・・・・
「一目惚れかな?」
始めて出会った公園での事を思い出す。
いつもなら。ああそんな事もあったっけ、と記憶から消えていくような出来事。
それが今でも忘れられないのは・・・・・・・浩之だったから?
あの時名前を聞かなかった事を気にしていたら、町中でばったり再会した。
そう、まるで運命のように・・・・・・
姉さんとも知り合いだって知り、同時に姉さんが変わり始めた原因だとも・・・・・・
私と姉さん、私達は外見はそっくりだけど性格は正反対だと言われている・・・けど根っこの部分はそっくり。
だからって同じ男に惹かれなくてもねぇ~。
よし!!この感情が恋なのか、確かめなきゃ!!
明日から頑張るぞ!!
そう心に誓い、名前を呟いてみる。
「浩之」
ぽっと胸と心が暖かくなるのが分かる。
そんな私の脳裏に悲しそうな姉さんの顔が浮かぶ。
姉さん、ごめんね。
私も好きになっちゃったかも。
でも、姉さんの事も大好き。
姉さんの幸せを奪う事なんて私に出来る訳がない。
もし恋だったら・・・どうしたら良いんだろう・・・
それにしても、浩之め~。私達姉妹を惚れさせるなんて罪作りな奴!!
はあ、本当どうしよう。
私は枕に顔を埋めた。
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