Omoitukane <- Back to Lab

「退け!!邪魔だ!!」

闇が疾走している。

立ちふさがるすべての物を闇に帰しながら。

破壊の限りを尽くしついに目当ての物を探し当てた。

しかし闇は目前で紅と混ざり合い力を失っていく。

その闇は王子様。

姫を救うため闇に染まった王子様だった。

命と引き替えに得た力、王子に残された命はあまりにも短かった。

「・・・ごめん」

王子様は姫を仲間に任せ、再会することなく力尽きた。

「だめ~!!」


機動戦艦ナデシコ

once again

第十一話 黒い夢


がば!!

勢いよく布団が跳ね上がる。

「・・・夢」

怖い夢でも見たのだろう体中汗まみれになっていた。

「また同じ夢・・・」

辺りを見渡す。

「・・・起きよう」

ベットから降りるとその足でシャワーに向かった。



「ふみゅ~」

艦長席から気の抜けまくった声がブリッジに響きます。

「ユリカ、もうちょっとしっかりしてよ」

「だってジュン君、暇なんだもん」

サツキミドリを出発してはや半月、火星までの道程のほぼ半分までやって来ました。

今回サツキミドリでの死者は数名、サツキミドリはほぼ無傷。

よって、ユリカさんがお葬式をする必要はありませんでした。

そのおかげでユリカさんは別段することが無く、ごらんの通りです。

まあ、最初の一週間ぐらいは今後の方針などを決めるためそれなりに忙しかったようですが。

残っているのは日々のルーチンワーク。

前ならそんな仕事はアオイさんに任せアキトさんを追い掛け回していましたが、今回は真面目に自分でやっています。

まあ、半分以上はアオイさんがやっているみたいですが・・・

そのお蔭でしょうか、クルーの皆には概ね優秀な艦長として認識されているようです。

ブリッジクルーはまた別の認識があるでしょうけど。

さて、そろそろ日課の時間ですね。

「よし、ジュン君。あとお願いね」

ユリカさんはそう言うとブリッジを出て行こうとします。

「ユリカ何処に行くんだい?」

律儀に声をかけるアオイさん。

「艦内の見回りだよ」

いつもと同じ答えを返しユリカさんはブリッジを後にしました。



「だぁ~、やられた~」

悔しそうな叫びが聞こえる。

「アキトさん、すごいです!!」

「本当、アキト君すごいね」

「リョウコに勝って調子リョウコ~・・・くっくっく」

「特訓だな!!特訓したんだな!!」

シミュレーターから出ると皆に囲まれた。

リョウコちゃんに勝ったのが原因だ。

「今のはまぐれだよ」

すこしずつ実力を出していく。これは相談して決めた。

未来を変えるということは俺達が知らない事が起きるということ・・・

俺だけで皆を守ることは出来ないし、ルリちゃんもナデシコAでは掌握することが出来ない。

戦力の増強が必要だ。

「テンカワ~、飲み込みが早すぎるぞ~!!」

リョウコちゃんが鬼のような形相で近づいてくる。

「いや、ルリちゃんのおかげなんだ」

「はぁ!?」

「サポートプログラムを作ってもらったんだ」

手っ取り早く戦力を上げるための手段

俺には意味がないが皆には役立つだろう。

「何~!!秘密兵器か!!」

「まあ、そんな所だ。ちゃんと皆の分あるよ」

言い終わる前にガイは出て行っていた。

ガイはほっておこうそのうち戻ってくるだろう。

それよりも皆の意思を確かめよう。

「皆も試してみてほしいんだけど」

「もちろん試す。死ぬ確率が減るかもしれないからな」

リョウコちゃんの言葉に皆頷いた。



「博士~!!俺にも秘密兵器を~!!」

ブリッジに大声が響きます。

こんな登場の仕方をするのはヤマダさんしか居ません。

「博士~!!」

周りの人には目もくれず私に向かって一直線にやってきます。

ちょっと怖いかも

「秘密兵器を俺にもくれ!!」

「秘密兵器ですか?」

「そうだ!!アキトにだけずるいぞ!!」

アキトさんが本気を出したようですね。

「ルリルリ、アキト君に何かあげたの?」

ミナトさんが割り込んできます。

「はい、エステバリス用のサポートプログラムです」

アキトさんには必要ないんですけどね

「へぇ~、ルリルリそんな事もできるんだ」

ミナトさんが驚きます。

「で、博士どうなんだ!!俺の分は!!」

そんな会話を無視してヤマダさんが催促してきます。

その目は血走ってます。

無いですって答えたらどうなるんでしょう?

「あります。すでにシミュレーターで使える様にしてあります。詳しい事はアキトさんに聞いてください」

アキトさんにはすでに伝えてあるんですが・・・

「本当か!!やったぜ!!ありがとう博士!!」

そういうとブリッジから飛び出ていきました。

はあ、単純ですね。



「そうなんだ、ルリちゃんそんな事もできるんだ」

「ああ、コンピューターには強いみたいだ」

目の前のスクリーンにはエステバリス同士の戦闘が映し出されている。

俺とユリカはそれを眺めている。

サポートプログラムを使用してのシミュレーション

今までの動きに比べだいぶ洗練されている。

「アキトは参加しないの?」

「もうちょっと皆が慣れてからな」

「ふ~ん・・・ねえ、アキト」

ユリカの顔がいきなり真面目になる。

「あの黒いバイザーなんだけど、できればしないで欲しいな」

「・・・なんでだ」

「夢にね黒ずくめの男の人が出てくるの」

「・・・・・・」

「誰かは分からないんだけど、私を助けだしに来るんだけど途中で倒れちゃうんだ」

「でね、黒いバイザーを見てるとアキトとその人がダブっちゃって・・・」

ユリカは目を伏せる。

「・・・夢だろ」

俺は泡立つ感情を押さえる。今の話は本当に在った事。

その男は俺のことだろう。しかし、ユリカはそれを知らないはず・・・

「そうなんだけどね。あまりにリアルなんで心配なんだ」

「・・・そうか」

「うん、最近そんな感じの夢ばっかり見るんだ。悲しい夢だけじゃなく嬉しい夢や楽しい夢もあるんだけどね」



「って、言ったんだけどどう思う?」

「・・・分かりませんね。でも帰ってきているならユリカさんが大人しくしてるのはおかしいと思います」

アキトの部屋の中、アキトとルリは頭を悩ませていた。

「そうだよな。あのユリカが大人しくしているとは思えない」

「どうなってるんでしょう・・・」

ユリカの性格上帰ってきているなら以前の様にいや、以前にも増してアキトにべっとりすると2人は思っているのだが、それがない。

それに黒ずくめでアキトが戦っていたのは知らないはず。

しかし、

「3人で暮らしていた事も夢に見ているんだよな」

夢には3人で暮らしていたあの日々もあった。自分以外の登場人物は誰か分からないようだが。

「・・・戻ってくるのに失敗したのかもしれませんね」

ルリがぼそっと呟いたのをアキトは聞き逃さない。

「それはどういうことだい?」

「ええっと、あくまで可能性というかただのこじつけですがそれでもいいですか?」

少し慌ててルリは答える。

「うん」

「では」

ルリは小さく咳払いする。

「私達は過去に戻ってきました。ですが体はその時代のものです。」

「単純に考えると魂だけが戻ってきたとか融合したとかそういうところだと思います。」

「この現象を起こしたのはおそらくユリカさんです。」

「遺跡に融合した事によりボソンジャンプを誰よりも理解しアキトさんを助けるために行なったのでしょう」

「その結果、アキトさんの近くに居た私たちも巻き込まれて過去に飛んでしまった。」

「私とアキトさん、そしてエリナさんは成功しましたが、ラピスさんは失敗」

「このことから失敗することがあることが分かります」

「そして、ユリカさんも失敗したのかもしれません」

「でも完全に失敗というのではなく、その記憶は夢となりユリカさんに影響を与えて行動を変えた」

アキトはじっと聞き入っていた。

「そういう考えもありか・・・」

「はい、でもユリカさんが黙っているだけの可能性もありますし、ただの偶然という可能性もあります」

「その推論だと・・・イネスも失敗している可能性もあるわけだよね」

「・・・はい」

「それに、俺の格好を知っている理由が分からない・・・こういうのはイネスの分野だな。帰ってきてるといいんだが・・・」

「そうですね」

二人ともいやではあったがこの問題に対する説明を期待していた。

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