「お疲れさま~」
ユリカさんが皆さんに労いの声をかけています。
ここに来た口実であるチューリップの調査が今終わったところです。
リフレッシュした後なので仕事が早いです。
チューリップの調査は予想通りで新しい発見はありませんでした。
前と同様中から出てきた巨大ジョロはエステバリス隊が瞬殺しました。
アキトさんが原型を留めるように落としてくれたのでついでに回収しています。
私達としてはこちらが本命ですけどね。
なぜならあの巨体を稼働させるために小型の相転移炉か新型のバッテリーを積んでいるはずです。
戦後クリムゾンの機動兵器はバッテリーのおかげでレールガンを標準装備にすることができました。
それを今の段階で手に入れられればかなりの戦力底上げになります。
まあ、生産できればですが・・・
「ルリちゃん?」
アキトさんを映したウィンドウが目の前に現れました。
「・・・なんですか、アキトさん?」
あまりに突然だったので少し驚きましたがあわてず騒がす冷静に返事を返すことに成功しました。
少し視線を動かすと「やったね(^^)v byオモイカネ」と表示されたウィンドウが有りました。
オモイカネも随分お茶目に成長したようですね、嬉しい限りです・・・・・・あとでどうしてくれましょうか!
「ガイ、どこにいるか知らないかい?」
そんな内心に気付かずアキトさんは話を進めます。
「山田さんですか?・・・・・・艦内にはいないようです」
オモイカネは私が尋ねるより早く結果が表示しました。話を聞いて独自で判断したんでしょう。こういう成長は嬉しいのですが・・・。
そういえば山田さん戦闘に出ていませんでしたね・・・まさか。
「ということはあそこかな?」
「・・・そうかもしれません」
アキトさんも気付いたようです。その顔はちょっと引きつってます。
そういえば、前回はアキトさんが捕まったんでしたね。
その時の事を思い出したのでしょう。
とりあえず、山田さんの冥福を祈っておきましょう。南無南無。
回収したのは30分後の事でした。
機動戦艦ナデシコ
once again
第二十四話 黒い鎧
軍港に一隻の戦艦が入港して来る。
それ自体は普段の光景でいつもは誰も気にしないのだが、今回は違った。
港の関係者は皆入港してきた白い戦艦を見つめている。
その戦艦は今巷で一番有名な戦艦だ。
戦艦でありながら軍所属ではなく民間が運営している。
しかも、たった一隻で火星に進行し民間人を救出してきた。
ゆえに現在最強と呼ばれている戦艦ナデシコ。
その看板の前に皆緊張していた。
「ミナトさん、車庫入れお願いします」
「りょう~か~い」
しかし、戦艦内のブリッジはあまりにも軽い雰囲気が支配している。
軍艦どころかそこいらの民間船でもあり得ないこの雰囲気はここが戦艦のブリッジであることを感じさせない。
「はい、しゅーりょーう」
操舵士のミナトはあっさりとそう告げる。
船外から船を見つめていた人々にすれば洗練されたその操船も彼女にとっては当たり前の操船。
ナデシコクルー達にとってもそれは当たり前。
伊達に最強とは呼ばれてはいないのだ。
「メグミちゃん、艦内に通達お願い。後はジュン君お願いね」
それだけ告げるとユリカは踵を返しブリッジを後にした。
慌ただしく貨物が運び込まれていく。
停船するや否や補給が始まった。
軍艦とは違い、生活必需品以外も取り扱っているナデシコは補給する物資が桁違いだ。
だから、各部署から人員が割かれ中身の確認を人海戦術で行なうことになっている。
俺もホウメイさん達と一緒に食材やら調味料やらの確認をしている真っ最中だ。
「ネルガル製品は嫌なんだけどねぇ~」
「しょうがないですよ。ここはネルガルなんだし」
「まあ、そうなんだけどねぇ~」
ホウメイさんが箱の中身を確認しながら呟く。
ネルガルはトイレットペーパーから宇宙船までと言われる位手広い商売をやっている。
だから、基本的にナデシコの補給は基本的にネルガル製の物ばかりになる。
個人で物を注文すれば別だけど。
「まあ、味が悪いって分けじゃないんだけどねぇ~」
ホウメイさんが軽い溜息をつく。
そうネルガル製品は味が悪いわけではない。値段相応というか・・・要するに可もなく不可もなくというやつだ。
まあ基本的に料理屋で使われる代物ではないのは確かだ。
本来、ホウメイさんは独自の調味料を仕入れていたのだが、さすがに世界中を転戦している身では満足なものを用意することは難しい。
そのかわり、転戦先でそこの特産品を入れてもらってはいる。
「「「おおおおおおおおおお~!!」」」
突然上がった男達の歓声に視線をそちらに向けると、人型の機動兵器が搬入されているところだった。
ということは先ほどの声は整備班の人たちなんだろう。
そして、その荷物と一緒に人が歩いてくるのが見えた。
その姿は見覚えがある。というか一目瞭然イツキちゃんだ。
今回、新型を持って帰ってくると言うのは聞いていたから間違いない。
彼女はきょろきょろ辺りを見渡したかと思うと俺の方に一直線に歩いてきた。
「お久しぶりです、アキトさん」
「おひさしぶり、イツキちゃん」
「アキトさんは何をしていらっしゃるんですか?」
「ああ、調味料とか食材とかの確認だよ」
「・・・そうでした、アキトさんはコックさんでしたね」
ちょっと呆けた様子のイツキちゃん。
「その様子だと忘れてたね」
「すいません。エステの事で頭が一杯でした」
彼女は苦笑する。
「気にすることはないよ」
「そうですか?後でお話があるんですけど何時頃時間取れます?」
「・・・えっと」
「なんだい?パイロットのテンカワが必要かい?」
ホウメイさんが話しに割り込んで来た。
「はい。今回持ってきた新機種はアキトさんに試してもらうのでそれの調整とかをしないといけないんです。」
「そうかい、テンカワ行って来な」
「いいんですか?」
「あたりまえだろ。お前はコックであると共にパイロットでもあるんだ。こっちは大丈夫だけどあっちはお前じゃなきゃ駄目なんだったらそっちに行くべきだ」
「はい、分かりました」
「じゃ、あとは任せていっておいで」
俺とイツキちゃんはエステが格納されている場所まで移動した。
その先ではいつもの服装の整備班と見かけない服装の人達が何かを言い合っていた。
「あれはなんだろう?」
「あの人達はサレナの開発者たちです。使用法とかを教えていると思うんですが・・・・・・」
会話の中身までは分からないが怒鳴りあっている彼らを見てイツキちゃんが自信なさげに答えてくれた。
「まあ、行ってみれば分かるさ」
俺達はずんずん近づいていく。
徐々に意味不明だった言葉が聞き取れるぐらいの声になっていく。
会話の内容は専門用語の羅列なので意味は分からなかったが、確かに情報の交換をしているだけのようだ。
「おう、二人とも早いな」
俺達に真っ先に気付いたのはセイヤさんだった。
「これ、お前もアイデア出したんだってな!」
その視線の先には黒い機動兵器がそびえ立っている。
俺の鎧だったあれとは違うコンセプトで作られたが名前は同じ黒い鎧。
「エステバリス追加装甲サレナか。手っ取り早い性能アップにはもってこいだな」
セイヤさんがうんうん唸っている。
それを横目にサレナを見つめる。
カラーリングは黒と同じだが形が随分と違う。
あっちは夜天光や六連達と一騎で戦うために無理やりに改造を施していった無骨な鎧。
こっちはただ単純にエステのスペックを上げるためだけに作られた鎧。
まったく似ていない二つの鎧を身に纏う俺は・・・・・・変われているのだろうか?
「アキトさん、調整しちゃいますからコクピットに付いてもらえますか」
イツキちゃんの言葉が思考に沈んだ俺の意識をこちら側に戻す。
「了解」
頭を振って思考を振り払いコクピットに乗り込んだ。
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