こんにちは。
ぺこり
ホシノルリです。
アキトさんの乗ったエステバリスが地上に出現しました。
周りは敵ばかりです。
アキトさんだから大丈夫だとは思いますが、ちょっと心配です。
機動戦艦ナデシコ
once again
第二話 王子様の帰還
「ルリちゃん、緊急発進シーケンス起動!!」
「了解。緊急発進シーケンス起動します。」
「メグミちゃん、管制に連絡。ドックに注水を開始してください」
「分かりました」
「各ハッチの閉鎖確認。核パルスエンジンフル稼働。相転移エンジン起動まで後10秒」
「相転移エンジンの起動と同時にグラビティ・ブラストにエネルギーチャージ開始して」
「了解。相転移エンジン起動確認、エネルギーチャージ開始します。」
「ミナトさん、ゲートに移動してください」
「りょーかい」
ユリカさんが真面目に艦長を行っています。
前回もこんな感じだったでしょうか?
「艦長、ドックの注水80%を超えました。出航できます。」
あとは、ユリカさんの号令だけです。
「機動戦艦ナデシコ、発進!!」
モニターに映るエステバリスは敵の攻撃を避け続けています。
ですが時々攻撃が当たってしまいます。
すべてディストーション・フィールドで防いでいるのでダメージはありません。
「俺のゲキガンガーに傷を付けるんじゃねぇ~!!」
当たる度にいちいちうるさいです、ヤマダさん。
「素人とは思えんな」
「たしかに。パイロットとして契約したいですね」
アキトさんの実力はまだまだこんな物じゃありませんよ。
「キィ~、なんで被弾しないのよ~」
副提督、うるさいです。
「ナデシコ、予定地点に到着しました」
「ルリちゃん、グラビティ・ブラストは?」
「50%を超えました。このまま浮上しても大丈夫です。」
「浮上開始!!」
「は~い。ナデシコ浮上しま~す」
「ルリちゃん、エステバリスに合流ポイントと時間を送って」
「わかりました。」
エステバリスのモニターに必要な情報を表示させる。
「アキトさん、合流ポイントは此処です。時間はカウントダウンしていきます。」
「アキトさん、1分を切りました。合流ポイントに向かってください」
「了解」
エステバリスが敵の追撃をかわしながら合流ポイントに向かっていきます。
「30秒前です」
海岸一歩手前でエステバリスが立ち止まり敵を引きつけます。
「20秒切りました。10秒からカウントダウンします」
「10」
「9」
「8」
「7」
エステバリスがライフルをばらまきます。
「6」
「5」
敵に背を見せ一気に海に向かって走り出しました。
「4」
「3」
「2」
迷うことなくエステバリスは海に飛び込みます。
「1」
ナデシコが海から顔を出します。
「0」
白い船体の上にピンクの機体が着地しました。
「敵、すべて有効射程に入っています」
さすがアキトさんです。
「目標、敵まとめてぜーんぶ、ぅてぇーっ!!」
ユリカさんの声と同時にナデシコから放たれた黒い光が敵を飲み込んでいきます。
飲み込まれた敵は次々と火の玉へと姿を変えていきました。
「戦況を報告せよ」
「はい、ジョロ・バッタともに殲滅。地上軍の被害は甚大。」
「ウソよ・・・こんなの、偶然に決まってるわ・・・」
キノコさん、これは実力です。
「艦長、いい指揮だった」
「さすがだね、ユリカ」
「ありがとうございます、提督。皆さんが優秀だったおかげです。」
「やはり私の目に狂いはなかった。」
「ふむ」
「すごいですね」
「ほんとうね」
皆賞賛しあってます。まあ、軍が敵わなかった敵を一撃で沈めたのだから気持ちは分かりますが。
でもするべき事はたくさんあるんですから・・・、ここはやっぱり
ばかばっか?
私はやるべき事をちゃっちゃと済ませちゃいましょう。
「やったね、オモイカネ」
【ありがとう、ルリ】
う~ん、口調が堅いですね。まだまだですね。
「全艦の状態を確認、特に相転移エンジン周りは徹底的にチェックして」
【了解】
「・・・ブリッジ」
アキトさんがあきれた様子で声をかけてきました。
「ん?どうしたの、アキト?」
「・・・戻っても良いのか?」
場がしーんと静まりかえります。
皆さん忘れてましたね。私はそんな暇がなかったのであえて突っ込みませんでしたが・・・
しかし、アキトさんも律儀ですね。10分ぐらい待ってましたよ。
「え、あっ、はははっ、お疲れ様。帰投してください。」
笑ってもだめですよ、ユリカさん。
「・・・了解。テンカワアキト帰投する」
エステバリスが格納庫に向かっていきます。
「戦闘態勢解除、通常シフトへ移行。通達をお願いします。」
「わかりました」
メグミさんが艦内に放送を流します。
「メグミさん、テンカワさんにブリッジに来ていただくように伝えていただけますか」
「あの迎えに行ってきましょうか?」
メグミさんが返事をするより早くプロスさんにそう告げます。
プロスさんは驚いた顔をしましたがすぐに微笑みを浮かべます。
「艦長よろしいですかな?」
「結構ですよ。」
ユリカさんが予想外の返事を返してきます。おかしいです。
本来なら「私が行きます!!」とかいうはずなんですが・・・
「ではルリさん、お願いできますか。」
「はい。オモイカネ、私が帰ってくるまで艦長の指示に従ってください。」
【了解】
私はオペレーターシートから立ち上がります。
すると
「アキト、アキト、アキト」
といいながらユリカさんがブリッジから出て行こうとします。
「艦長、どこに行かれるのですかな?」
「アキトの所です!!」
やっぱりユリカさんです。私の思い過ごしでしょうか?
「だめです。やって頂かなくてはならないことがたくさんありますので」
「え~ん、アキト~」
さあ、アキトさんを迎えに行きましょう。
プシュ~
格納庫の扉が音を立てて開きます。
中ではエステバリスの前に人だかりができていました。
人だかりの中にアキトさんを見つけました。整備班の人たちに揉みくちゃにされています。
私は迷わず近づきます。
アキトさんは笑顔を浮かべていました。昔のままの笑顔です。
あの言葉への反応そしてエステバリスの操縦技術・・・私の知っているアキトさん・・・の筈です。
でも、笑顔が私を不安にさせます。あれほど見たかった笑顔だというのに・・・
・・・本当にアキトさんなんですか?
「どうしたんだい、ルリちゃん?」
少し考え込んでいたようです。
いつの間にか私の目の前にアキトさんの顔があります。
「何でもないです。お疲れ様でした、アキトさん」
「ありがとう」
アキトさんが微笑みます。
抱きつきたい衝動に駆られますが、此処はぐっと我慢です。
「プロスさんがブリッジまで来て欲しいらしいので迎えに来ました。」
「ありがとう、ルリちゃん。じゃいこうか」
アキトさんは立ち上がると私の手を取って歩き出します。
「・・・はい」
ウリバタケさん達が何か言っていますが無視していいでしょう。
格納庫からブリッジに向かいます。
アキトさん・・・さっき私の名前を呼びましたよね。
まだ、教えていないはずです。
間違いなく、アキトさんは私の知ってるアキトさん・・・の筈です。
「ルリちゃん」
「・・・はい」
「・・・電子の妖精・・・」
アキトさんが耳元でささやきました。
「・・・アキトさん」
アキトさんを見上げます。
「チキンライスで良いよね?」
顔にほほえみを浮かべています。
やっぱり、アキトさんなんですね。
「・・・それも良いですがラーメンも食べたいです」
「ラーメンは何も準備してないからまた今度ね」
「分かってます。最高のレシピ知ってますから」
アキトさんが苦笑しています。
「・・・あの、アキトさん?」
「ん?何かな?」
「体は何ともないですか?」
「ん?ああ、五体満足。どこにも悪いところはないよ」
良かった。五感は戻っているみたいです。
繋いだ手に力が入ります。
「・・・コックするんですか?」
「・・・ああ、夢だからね」
アキトさんが帰ってきました。
抱きつき胸に飛び込みたいのですが、誰が見ているか分からないので此処は我慢、我慢。
後でたっぷり甘えさせてもらいましょう。
でも、これだけは・・・
「ルリちゃん?」
とっておきの笑顔を浮かべて、心にしまっておいた言葉を紡ぎます。
「・・・お帰りなさい」
「・・・ただいま」
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