きーん、こーん、かーん、こーん・・・・
昼休みを告げる鐘が鳴り響きます。
「星野さん、ご飯はどうするの?」
「お弁当があります」
教師がを出て行くといち早く神岸さんが声をかけてきます。
彼女は世話好きのようです、休み時間の度に話しかけてくれた事からそう断言できます。
彼女のお陰で転校生が最初に受ける試練である周りを取り囲まれての質問攻め・・・オモイカネのデータベースにはそう書いてありました・・・を受けずに済んでいます。
かわりに、神岸さんの友人である女性、長岡さんの執拗な質問攻めを受ける羽目になりましたが・・・・・・
「じゃあ、私達と一緒に食べない?」
「すいません。先約があるので・・・・・・」
人付き合いというのは最初が肝心ですが・・・お昼は譲れないんです。ええ、そうですとも!!
「そっか、それじゃ仕方ないね。」
「あかり、行くぞ」
少し残念な顔をする彼女に横手からぶっきらぼうな声がかかります。
声の主は藤田浩之さん。神岸さんの幼馴染みだそうです。
少々目付きが悪く怖い印象を与える彼ですが、長岡さんとの漫才は結構面白いです。
彼は神岸さんを置いてさっさと教室を出て行きました。
「星野さん、また後でね。浩之ちゃん、待ってよ~」
そんな彼を彼女は慌てて追いかけます。
その姿はなんと言いますか・・・・・・犬?尻尾が見えそうな気がします。
そして、それは懐かしい人達を思い起こさせます。
楽しく永遠に続くと思っていたあの日々。あの人達は元気なんでしょうか・・・・・・
「・・・・・・行きましょう」
少々感傷に浸ってしまいました。
時間にして僅かですが、あの人を待たせてしまってはいけません。
お弁当を片手に教室を後にしました。
汎用人型決戦兵器
ナデオン
第弐話 大関スケコマシ
中庭の入り口に男子生徒が立っている。
その男は腕を組み、軽く瞳を閉じ壁に寄りかかっていた。
先ほどからじっと微動だにせず、人を寄せ付けない雰囲気を身に纏いそこに佇んでいる。
普通なら視線すら向けたくない雰囲気の人物だがその手にある巾着袋がそれを中和している。
巾着袋には少々不細工なおそらく動物達のかわいい刺繍が施されているのだ。
あまりにも可愛い巾着袋のお陰で興味深げな視線が彼に纏わりついていた。
タタタタタ~
遠くから廊下を駆ける軽い音がだんだん近づいてくる。
その音に男は初めて反応し視線を走らせる。すると男の雰囲気がとたんに柔らかくなった。
視線の先には廊下をこちらに向けて駆けて来る星野ルリ。
瑠璃色の長いツインテールを靡かせながら走るその姿はまさに妖精と呼ぶにふさわしい。
実際、多くの生徒はその姿に目を奪われている。
そんな視線に気付くことなく妖精は脇目も振らず一直線に目的地に向かう。
その視線の先には一人の男の姿。その目前で彼女はぴたっと停止した。
「はぁはぁ・・アキトさん・・・遅れて・・・すいません」
「俺も来たばっかりだよ」
ルリは息を切りながら男に謝罪を述べた。
アキトはすぐさま返事を返す。
他人を思いやる嘘。彼は穏やかな雰囲気を身に纏いルリを労わっていた。
その様子にルリはほっと息を吐き、周りを見渡した。
「混んでますね」
「そうだね。空いてる所を探さないとね」
二人の視線の先にはそれなりに混み合っている中庭。
所々にあるベンチはすでに生徒達で埋まっており、芝生に座り込んでいる者もいる。
常夏である日本では昼の日差しはそれなりにきつい。よって必然的に日陰の場所から埋まっていく。
出遅れた二人の視線の先には日向しか空いていなかった。
「ルリちゃん、あそこでいいかい?」
「・・・はい」
アキトが指し示した場所はやはり日向だった。
「あれ?星野さん?」
歩き始めたルリ達に日陰から声がかかった。
「神岸さん?」
声の主は神岸あかりだった。
「うん。星野さんも中庭でお昼なんだ?でも、もう日向しか空いてないよ?一緒に食べない?」
「え?でも・・・」
ルリがアキトに視線で問い掛ける。
「そっちの人もどうですか?日陰は涼しいですよ?」
それを見たあかりはすかさずアキトにも誘いの声をかける。
「いいのかい?こちらからお願いしたいくらいだよ。ね、ルリちゃん?」
「はい」
アキトの返答にルリは即座に同意する。
「2名様、ご案内・・・・・・なんちゃって」
二人があかりの寒いギャグ?に招かれ日陰に入ると、そこには女性が3人に男性が1人の計四人が座って食事をしていた。
男はルリの知っている藤田浩之。だが女性3人は見た事が無かった。
桃色の髪をした大人しそうな少女。蒼い髪をした活発そうな女の子。そして流れるような黒髪の大和撫子。
皆タイプは違うが美人の部類に入る女性達だ。もちろんあかりもまたタイプが違う美人だ。
実際4人とも学校の美女ランキングの上位にランキングされている。
そんな4人に囲まれているお昼をいつも食べている浩之は羨望と嫉妬の的。
しかし、本人は気にしていないどころか気付いてさえいない。
今この瞬間でさえ自然と楽しげに食事を進めている。
そんな状況を例える言葉は大人しく言えば、両手に花、過激に言えばハーレムといった所だろう。
「大関スケコマシ・・・」
その状況を的確に把握したルリはぼそっと呟いた。その単語にアキトは苦笑する。
「それじゃ、紹介するね。左から松原葵ちゃん、姫川琴音ちゃん、藤田浩之ちゃん「だから、ちゃんはやめろ」来栖川芹香先輩そして私、神岸あかりの計5人。いつも大体ここで食べてるの。」
浩之の声を無視してあかりは二人に紹介する。
葵、琴音は興味深げに、芹香はボーっと二人を見つめている。
「星野ルリ、天川アキトです」
ルリが自己紹介をする。
「ちなみに、葵ちゃんと琴音ちゃんは一年生。来栖川先輩は三年生だよ」
「あ、俺も三年だ。来栖川さんと同じクラスのはずだ」
アキトが自分のことを補足する。
「・・・・・・」
ぼそぼそと芹香が浩之に何事かを囁く。
「確かに同じクラスだってさ。ああ、気にしないでくれ。先輩はちょっと人付き合いが苦手でさ」
浩之は芹香の言葉を代弁し、その事に対し弁解も入れる。
知らない人に何度も聞かれる事なので先に言う事にしているのだ。
「適当に座って。早くしないと昼休み終わっちゃうよ」
「そうですね」
ルリはあかりの隣に座りこみ弁当を開く。アキトはその隣に腰掛ける。
「むっ!」
ルリの弁当を覗いたあかりの目がキュピーーンと光る。
「星野さん、そのお弁当はあなたが作ったの?」
「ルリでいいですよ、神岸さん。これはアキトさんが作りました。」
「それじゃ、私もあかりでいいよ。これ天川さんが作ったんだ」
あかりは弁当とアキトを交互に見つめる。
「美味しそうだね。ひとつ、もらってもいいかな?」
「はい、どうぞ」
ルリは愛想良く了承する。アキトの弁当がおいしそうだと言われた事が嬉しいらしい。
あかりは鶏の唐揚げをひとつつまみ口に入れる。
「・・・むむむむ」
「あの・・・あかりさん?」
「あ、ごめんね。すごく美味しいよ」
咀嚼後唸るのを心配したルリにあかりは笑みで答える。
「そうですよね。アキトさんの料理美味しいですよね」
あかりの言葉にルリは満面の笑みを浮かべる。
「天川さんだっけ?あかりを唸らせるなんてすごいな」
浩之がアキトに話し掛ける。
「まあ、料理人志望だからね」
「へぇ~」
「君の弁当も美味しそうじゃないか、浩之君」
「そうだろ?これあかりが作ったからな」
自分が褒められた訳じゃないのに浩之は嬉しそうな顔をする。
後ろではあかりが頬を紅く染めている。
そんな浩之を見つめる4つの眼。
「もちろん、二人も上手だよ」
それに気が付き、浩之は慌ててフォローを入れる。
その姿にアキトは苦笑した。昔、似たような経験をしたことがあるのだ。
「へぇ~、あかりちゃんが作ったんだ」
「・・・アキトさん」
「はい!」
ルリの不機嫌そうな声にアキトが背筋を伸ばす。
「初対面の女性をちゃん付けで呼ばないと約束しましたよね」
にっこりと綺麗に微笑むルリ。
とても美しい笑顔なのだが、アキト達には悪寒が走る。
「・・・あの・・・ルリさん?」
「はぁ、まあアキトさんだから仕方ないですね」
顔を青くしたアキトの返答を無視し、やれやれとルリは肩をすくませる。
「・・・なんか納得いかない」
アキトはいじけたオーラを纏い、小声でポツリと呟く。
その言葉に浩之はしきりに頷いている。どうも共感を得たようだ。
そんな男共を尻目に琴音がルリに声を掛けた。
「あの、お二人はどういったご関係なんですか?」
その顔は興味津々、後ろでは葵もじっと回答を待っている。
「婚約者です」
ルリは何の戸惑いも見せずさらっと返答を返す。
「「「えええ~!!」」」
「・・・!!」
あかりを除いた皆がその内容に驚き、声を上げた。
「浩之ちゃん、やっぱり聞いてなかったんだ」
「ルリちゃん、それは秘密だって・・・」
「自己紹介の時にばらしましたから、時すでに遅しです。」
ルリはにっこり微笑んだ。
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