Omoitukane <- Back to Lab

「どうしよう?」

少年は床に座り込み、周りを見渡しながら呟いた。

視線の先には白い壁、どちらを向いても窓がなく外が見えない。

見えるのは少年と同じように座り込んでいる数十人の人々だけだった。

「来ないほうが良かったのかな?」

少年は愚痴りながら今日の出来事を振りかえる。

音信不通の親からの理不尽な呼び出しに応じて、見知らぬ町に向かっている最中に突然の警報。

そして、シェルターに避難させられ今に至る。

あまりにも日常からかけ離れている出来事に苦笑を浮かべる。

「このままじゃ、待ち合わせに遅れるよ」

ちらりと時計を見やるともうすぐ待ち合わせの時間。

手持ちの携帯は使えず、公衆電話も無く連絡のしようがない。

そこら辺をきっちりしている少年にとって、この状況はかなり困ったことだった。

それに3年ぶりの父親との対面。せっかくの機会が泡と消えようとしてる事に少年は対策を捻り出そうと思考の渦に沈み込んでいった。


新世紀エヴァンゲリオン

The pink from that came from far

第1話 使徒襲来(前編)


「碇シンジ君ね?」

突然の呼びかけに視線を向けると、そこには大人の女性が立っていた。

「・・・葛城ミサトさん?」

「そうよ~ん。で、君はシンジ君で間違いないのね?」

「はい、そうです」

僕は彼女と初対面。

ならなぜ名前を知っていたのか。それは父さんから送られてきた手紙のせいだ。

迎えに来る相手として葛城さんの写真が同封されていた。

ここまではいいんだけど、その写真にはご丁寧にも胸元に『ここに注目!!』と書かれていたんだ。

その所為で皆にからかわれたのだから忘れられるわけが無い。

「じゃ、着いて来て」

そんな僕の思いを余所に葛城さんが踵を返し歩き出した。

僕は慌ててその後へ続く。

「どこへ行くんですか?葛城さん」

「決まってるでしょ、貴方のお父さんの所よ」

「え?シェルター出ても良いんですか?」

「大丈夫よ」

会話を続けながらも歩きつづける僕達。

細い通路はゆっくりと地下に向かって伸びている。

通路を抜けるとそこには一台の車が止まっていた。

「はい、乗って乗って」

葛城さんはするりと運転席に乗り込んだ。

中を覗くと助手席には荷物があったので僕は後部座席に乗り込む。

「いいわよ」

葛城さんが携帯に向けて話すとガコンと音を立てて地面が動き出した。

車はゆっくりと地面に沈み込んでいく。

此処は駐車場じゃなくカートレインだったようだ。

カートレインの速度が安定すると葛城さんが話し掛けてきた。

「シンジ君、お父さんからIDカード貰ってないかしら?」

「これですか?」

財布に締まっておいたカードを取り出しミサトさんに見せる。

それは手紙に同封されていた。

「ありがと、じゃこれ読んどいて。あ、そうそうミサトって呼んでねん」

カードを確認した葛城さんは助手席にあった分厚い本を放り投げた。

げっ、重い。普通、投げるかな~。

そんな感想を洩らしてしまうほどそれは重く分厚いパンフレットだった。

表紙には「ようこそNERV江」と書かれている。

「ようこそネルフへ?」

「そう、私や貴方のお父さんが所属する組織よ。どんな仕事か聞いてる?」

「国連の非公開組織ですよね?何をしてるのまでは知りませんけど」

ぱらぱら捲りながら受け答えをする。

「だれに聞いたの?」

声のトーンが変わった。僕を警戒しているようだ。

知ってちゃまずいのかな?

「知り合いにそういうのに詳しい人が居るんですよ」

「・・・そう」

納得はしていないみたいだ。

でも、これ以上は言えない。

僕にも都合があるんだ。

葛城さんをどうかわそうかと考えていると突然カートレインはトンネルを抜けた。

「うわ~、本物のジオフロントだ!」

トンネルなどとはスケールの違う地下に作られた大空洞、ジオフロント。

人間の手で掘られた物でなく其処にあった物らしい。

知識では知っていたけど実物は迫力が違う。たしかに人の手で作れるとは思えない。

僕が感動していると葛城さんは説明をしてくれた。

「そう、これが私たちの秘密基地ネルフ本部。世界再建の要・・・・・・人類の砦となる所よ」



「何をやっていたの?葛城一尉。私達には人手も無ければ時間も無いというのに・・・・・・」

エレベーターから現れた白衣を纏った金髪の女性がミサトさんに話し掛けた。

「あはは、ごみん」

「どうせ、また迷ってたんでしょ。」

「うっ・・・」

がっくりとうなだれるその姿に僕は苦笑するしかない。

迷っていたのは確かだしね。

ふうと溜息をつくと女性は僕に視線を向けてきた。

「例の男の子ね」

「そう、マルドゥックの報告書によるサードチルドレン」

「私は赤木リツコ。技術部部長をしているわ。よろしくね」

赤木さんはすっと手を差し出してきた。

僕はその手を握り挨拶を返す。

「碇シンジです。よろしく、赤木博士」

「リツコで良いわよ」

「分かりました。リツコさん」

「お父さんに会わせる前に見せたい物があるの。付いて来て」

リツコさんは颯爽と身を振り返しエレベーターに乗り込んだ。



「真っ暗ですね?」

シンジが連れられ辿り着いた先は暗くて広い場所だった。

「わっ!!」

ぱっと明かりがつくとシンジは驚きの声をあげる。

部屋には巨大な鬼のような顔が水から突き出しているのだ。

「驚いた? 人の造り出した究極の汎用人型決戦兵器。人造人間エヴァンゲリオン、その初号機。我々人類の、最後の切り札よ」

「・・・これが父さんの仕事ですか?」

『そうだ』

シンジの問いへの答えはスピーカーから響きゲージ内を反響した。

「父さん?」

『そうだ。久しぶりだな、シンジ』

シンジの視線の先、初号機の更に上のガラスの向こうにシンジ達を見下ろしている人物が居た。

その人物の名は碇ゲンドウ。

サングラスに髭を蓄えたその姿はまったくに似ていないが正真正銘シンジの父親だ。

『ふっ・・・出撃』

「出撃!? 零号機は凍結中でしょ? ・・・まさか! 初号機を使うつもりなの!?」

ゲンドウの言葉に真っ先に反応したのはミサトだった。

リツコはミサトの声に冷静に答えを返す。

「他に道はないわ」

「ちょっと、レイはまだ動かせないんでしょ?・・・パイロットがいないわよ」

「さっき届いたわ」

その言葉にミサトはちらっとシンジを見、リツコに向き直る。

「・・・マジなの?」

リツコはミサトの声には返事を返さずシンジと視線を絡ませる。

「シンジ君、あなたが乗るのよ」

「本気ですか?」

『そうだ』

肯定の返事を返したゲンドウにシンジは視線を向ける。

「素人でも動かせる物なの?」

『説明を受けろ』

「他にも人はいるでしょ?」

『お前が適任だ。』

「・・・リツコさんに聞けばいいの?」

『そうだ』

それなら口を挟まないでよ、と思いながらシンジは質問の矛先をリツコに向けた。

「リツコさん、パイロットはいないんですか?テストパイロットとか居るはずですよね?」

「操縦方法が特殊でパイロットは現在貴方を含めて世界で3人しか選出されていないの」

「あとの二人は?」

「一人は怪我で入院中、もう一人はドイツにいるわ」

リツコはシンジの頭の回転のよさに驚きながら淡々と答える。

「怪我って・・・酷いんですか?」

「絶対安静が必要ね」

『乗るなら早くしろ!!でなければ帰れ!!』

シンジとリツコの会話に業を煮やしたのかゲンドウが怒鳴った。

その声は場に居た者を竦みあがらせるのには十分なものだ。

「うるさい!!僕はリツコさんと話してるんだ!!」

だが、その恫喝はシンジには効かなかったようだ。

『!!・・・冬月、レイを起こしてくれ。』

ゲンドウはシンジから目を背け、通信機の向こうへ指令を出した。

「敵の目的は分かっているんですか?」

シンジは質問を再会する。

「え?ええ、サードインパクトを起こすことよ」

リツコはゲンドウの声に竦みあがっていたがシンジの問いかけに冷静さを取り戻し返答していく。

「・・・はい?」

シンジは突拍子も無い科白に呆けた顔をする。

「ネルフはサードインパクトを阻止するための組織なの」

「サードインパクト・・・インパクトって隕石の落下じゃないんですか?」

「セカンドインパクトは敵、私達が使徒と呼称しているものが起こしたの」

「もしかして今襲ってきているっていうのも・・・」

「ええ、使徒よ」

その言葉を聞いてシンジは天を仰いでからリツコに向き直った。

「・・・選択の余地があるとは思えませんけど」

「ごめんなさいね。本当は万全の体制で臨みたかったんだけど・・・」

リツコの顔にすまなさそうな表情が浮かぶ。

それを見てシンジは溜息を付き、父親に向き直る。

「父さん、用事はこれだけなの」

『そうだ』

その答えにシンジは溜息を付いたがすぐさま表情を引き締めリツコに向き直った。

「リツコさん、今回は乗ります。今後の事は帰ってきたら相談しましょう。それで良いよね、父さん」

『かまわん』

「シンジ君?分かってるの?これに乗るという事は・・・」

「葛城一尉!!」

今までじっと黙っていたミサトがあげた声をリツコが大声で妨げた。

「ミサトさん、この状況では仕方ないですよ。さすがに僕も死にたくないですし。」

「でも!!」

「可能性が有るほうに賭けるのは正しいと思いますよ」

「シンジ君」

「やれるだけやりますから、ミサトさんも頑張ってください」

「それじゃ、こっちに来て」

「はい」

リツコに促されシンジが歩き出す。

その時プシューと扉が開き医師と看護婦が移動式ベッドと共に現れた。

ベットの上には包帯でぐるぐる巻きの蒼銀の髪の女の子が横たわっている。

「彼女は?」

「綾波レイ。最初に見つかった適格者、ファーストチルドレンよ」

シンジはベットに近寄りレイの様子を見ると眉を顰めた。

素人目に見てもあきらかに重傷だ。

「僕が戦うから安心して休んでいて」

シンジはレイに声を掛けると振り返る。

「リツコさん、行きましょう」

リツコとミサトとシンジの3人は急いでケイジを後にした。

ガラスの向こうではゲンドウの顔がにやりと歪んでいた。



「エントリープラグ、注水」

アナウンスと共にプラグにLCLが注入されていく。

スクリーンに映るプラグ内部が瞬く間にLCLで満たされていく。

シンジ君は少し不安げな顔でポツリ。

『水漏れですか?』

「違うわよ!」

「それがLCLよ。さっきも言ったけど肺の中を満たせば直接血液に酸素を取り込んでくれるわ」

すばやく反応したミサトを無視して確認する。

『気持ち悪い』

「我慢しなさい、男の子でしょ!」

『血の味はさすがに如何かと思うんですけど』

「ごめんなさい。組成を替えるわけにはいかないの。それと、ミサト?貴女浸かってみる?」

「いえ、結構です」

シンジ君にいちいち突っかかるミサトに釘を刺す。

彼が初陣だって事、分かってるのかしら?

まあ、私達もだけど・・・。

「主電源接続」

「全回路動力伝達」

「了解」

起動プロセスが流れるように進んでいく。

「凄いわね」

「どうしたの?」

私が零した言葉にミサトが食い付いてきた。

「彼、あまり緊張していないみたいなの。初めてだらけなのに・・・」

「肝が据わってるんでしょ?いいことなんじゃない?」

的外れなミサトの答えに溜息を付く。

まあ、確かに戦力としてみるなら気にしなくていいんでしょうけど。

私の思考を無視してプロセスは進んでいく。

「第ニ次コンタクトに入ります。A10神経接続異常なし」

「思考形態は日本語を基礎原則としてフィックス」

「初期コンタクト問題なし」

「双方向回線開きます」

「初号機、起動」

「ハーモニスク、全て正常位置。暴走、ありません」

「シンクロ率は?」

「43.4%です」

「凄いわね」

予想より高いシンクロ率に私は驚いた。

「リツコいけるの?」

「ええ、動かすのに問題は無いわ」

高いことにこしたことは無いわね。

後で実験すれば良いんだし。

「よし! 発進準備!」

「第一ロックボルト外せ」

「解除確認」

「アンビリカルブリッチ移動開始」

「第2ロックボルト外せ」

「第一拘束具を除去」

「同じく第二拘束具を除去」

「1番から15番までの安全装置を解除」

「内部電源充電完了」

「内部用コンセント異常なし」

「了解。エヴァ初号機射出口へ」

「進路クリア。オールグリーン」

「発進準備完了」

「・・・構いませんね」

ミサトは最後の確認を司令に取った。

「もちろんだ。使徒を倒さない限り我々に未来はない」

「発進!!」

初号機はカタパルトによって一気に地上に向けて加速した。

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